地平線の向こうに、新たなオアシスの影が見える。逸る気持ちを抑え、まずはこの羊皮紙に期待を記しておこう。
数ヶ月前、私はロジクールのトラックボール「ERGO M575S」という、快適な安息所を見つけた。親指でボールを操る“サムタイプ”は、長年連れ添ったマウスからの乗り換えを優しく受け入れ、私はその快適さに完全に満足していた。もはや、この旅は終わったのだと。
しかし、心のどこかに、ずっと忘れられない景色があった。 それは、人差し指で大玉を操る“フィンガータイプ”という、遥か頂きに座す王者の姿。かつて一度だけその宝珠に挑み、あまりの作法の違いに即座に逃げ出した苦い記憶が、私の魂を燻らせ続けていた。
「サムタイプという修練を積んだ今なら、あの宝珠に手が届くのではないか?」 それは、安住の地を自ら捨て、トラックボールという快適な沼の、さらにその先にある「終着駅」を目指す、新たな挑戦の狼煙だった。
この羊皮紙のあらまし
- この羊皮紙のあらまし
- この羊皮紙が導く者
- 砂漠の道標
- 王者の選択:Kensington SlimBlade Proという宝珠
- 開封の儀:宝珠の威光
- 真価を解放する儀式:KensingtonWorksとツイストスクロール
- 羊皮紙を巻く前に:私がここを「終着駅」と呼ぶ理由
- 砂漠で見つけた魔法のランプ
- 羊皮紙の余白に書き足す
- ラクダの独り言
この羊皮紙が導く者
- トラックボールという、未知の神器に興味を抱く者
- サムタイプという安息所から、フィンガータイプという頂きへの道を探す探求者
- Kensingtonのトラックボールが、なぜ「王」とまで呼ばれるのか、その伝説の真実を知りたい冒険者
砂漠の道標
- トラックボール - マウスのように本体を動かすのではなく、固定された本体のボールを指で回転させてカーソルを操作する入力装置。手首への負担が少ない。
- サムタイプ - 親指でボールを操作するトラックボールの方式。マウスからの移行が容易で、初心者向け。
- フィンガータイプ - 人差し指や中指でボールを操作する方式。大きなボールを使用し、より繊細で広範囲の操作が可能。
- ツイストスクロール - Kensingtonの特許技術。ボールを水平に回転(ひねる)させることで画面をスクロールできる機能。
- KensingtonWorks - Kensington製トラックボールの機能をカスタマイズするための専用ソフトウェア。ボタン配置やスクロール設定が可能。
- デュアルモニター - 2台のディスプレイを接続して、作業領域を拡張する環境。広い画面移動が必要となる。
王者の選択:Kensington SlimBlade Proという宝珠
フィンガータイプへの再挑戦。それは、雪辱戦だ。ならば、最高の武具で挑みたい。数多の古文書(レビュー記事)を読み漁り、私が辿り着いた答えは、やはりトラックボールの始祖にして王、「Kensington」だった。
候補は二大巨頭、「SlimBlade」と「ExpertMouse」。最終的に私が「SlimBlade」を選んだ決め手は、その高さだ。ExpertMouseは見た目以上に背が高く、愛用の薄型キーボードと並べた時の段差が、私の美学に反した。シームレスな操作感を求め、SlimBlade Proに決定。そして、どうせならとAmazon限定の、漆黒のボディに鎮座するクールな黒玉モデルを選んだ。
開封の儀:宝珠の威光
Amazonから届いた簡素な箱を開けると、その主は静かな威光を放ち、鎮座していた。
第一印象は「想像以上に大きい」。光沢のあるボディは、部屋の景色を映し込むほどの輝き。付属品のナイロン編みのケーブルや、コネクタに刻まれたロゴの一つ一つに、王者の風格が漂う。
宝玉は本体に乗っているだけ。指でつまめば簡単に持ち上がり、日々の手入れも容易い。
愛機Keychron K15 Proと並べると、まるで誂えたかのような完璧な一体感。黒玉を選んだ私の選択は、やはり間違っていなかった。
真価を解放する儀式:KensingtonWorksとツイストスクロール
この神器の真価は、専用の魔導書(ソフトウェア)「KensingtonWorks」をインストールすることで解放される。そして、SlimBlade最大の特徴がツイストスクロール。宝玉を水平にひねると、画面がどこまでもスクロールするのだ。その際、宝珠の内奥から響く「カリカリ…」という音(触覚フィードバック)は、まるで古の金庫のダイヤルを回すかのような、官能的なフィードバックを与えてくれる。
羊皮紙を巻く前に:私がここを「終着駅」と呼ぶ理由
過去の挫折から、フィンガータイプには相当苦戦する覚悟だった。しかし、驚くことに、買ったその日からごく普通に使えたのだ。サムタイプでトラックボールの作法に慣れていたことが、私を新たなステージへと導いてくれたのだろう。
今、二つの神器を知る私が、もし「どちらが良いか?」と問われれば、答えはただ一つ。 「Kensington SlimBlade Proだ」と。
その理由は、圧倒的な「移動の優雅さ」に集約される。 デュアルモニターの端から端へ。マウスやサムタイプでは手首や親指をせわしなく動かす必要があったその距離を、SlimBladeは、指先で宝玉をスッと撫でるだけで、魔法のように滑り渡る。
数万行のコードを旅する時も同じだ。宝玉を軽くひねり続けるだけで、画面はどこまでも流れていく。この「最小の動きで、最大の結果を得る」という感覚。それは、一度味わえば二度と後戻りできない、王だけが知る快感だ。
ただし、冒険者よ、心せよ。これから初めてトラックボールという神器に触れるなら、マウスからの違和感が少ないサムタイプから旅を始めることを強く勧める。まずはそこで「ボールで世界を操る」という基本を身につけてから、このフィンガータイプの宝珠を目指すのが、挫折なき王道だ。
私にとって、Kensington SlimBlade Proは、トラックボール探求の旅における、間違いなく一つの「終着駅」となった。手首は解放され、操作はより優雅に、そして直感的に。これは、快適なPCライフという名の楽園を求める、全ての冒見者に訪れてほしい「革命」である。
どうやらインクが切れそうだ。今日の記録はここまでにして、道具の手入れでもするとしよう。
砂漠で見つけた魔法のランプ
- KensingtonWorks | 神器の真価を解放する魔導書
羊皮紙の余白に書き足す
この宝珠の虜となった私は、ついに2台目を迎え入れてしまった。今度は、炎を宿したような赤玉だ。
ノートPCでは、長らくサムタイプという安息所で満足していた。しかし、デスクトップでKensingtonの「指先で世界を操る」優雅さを知ってしまった今、もはやサムタイプの親指操作が、どうにも窮屈に感じられるようになってしまった。
結果、ノートPC用にも、この宝珠を迎え入れる決断をした。
もはやこれは、単なる入力装置への満足ではない。一度知ってしまった「王の快感」からは、二度と後戻りできないのだと、改めて思い知らされた次第である。
ラクダの独り言
この前、「もうこれ以上はない」とか言って、親指でコロコロする玉っころに満足してたはずなんだがな。今度は、もっとデカくて黒い玉っころを手に入れて、「これが終着駅だ」なんて言って、人差し指でうっとりと撫で回している。ご主人の「終着駅」ってのは、どうやらあちこちにあるらしいぜ。まったく、飽きねえお人だ。
