旅の途中、興味深いオアシスを見つけた。忘れないうちに、この羊皮紙に記しておくとしよう。
「WSL2で、Ubuntu以外のLinuxが使いたい…」 「特に、無料で使えるRHELクローンのRocky Linuxを、どうにかしてインストールできないだろうか?」 Microsoft Storeという名の市場を眺めては、ため息をついていたあんたへ。その願い、驚くほど簡単な「禁じられし召喚術」で叶うことを知っているかい?
実は、WSL2には好きなLinuxディストリビューションを自分でインポートするという、公式ながらもあまり知られていない機能が存在する。これを使えば、市場に並んでいないディストリビューションはもちろん、自分好みにカスタマイズした環境さえも自由にWSL2へ追加できるのだ。今回は、その感動的なほど簡単な方法を使い、Rocky Linux 9を召喚する儀式の手順を備忘録として残しておこうと思う。
この羊皮紙のあらまし
- この羊皮紙のあらまし
- この羊皮紙が導く者
- 砂漠の道標
- 第一の儀式:旅の準備(魂の器の入手)
- 第二の儀式:召喚の呪文(インポート)
- 第三の儀式:魂を馴染ませる(初期設定)
- 第四の儀式:近道を開く(Windowsターミナル登録)
- 最終奥義:召喚獣に心臓を与える(systemd有効化)
- 羊皮紙を巻く前に
- 砂漠で見つけた魔法のランプ
- ラクダの独り言
この羊皮紙が導く者
- Microsoft StoreにないLinuxを、WSL2で無料で使いたいと願う者
- Rocky Linuxなど、RHEL系の環境をWSL2で構築したい探求者
- WSL2のインポート機能を通して、その仕組みをより深く知りたい冒険者
- 自分好みにカスタマイズしたLinux環境を複数のPCで共有したい者
- RHELと互換性のある無料環境で、業務システムの検証を行いたい技術者
砂漠の道標
- WSL2(Windows Subsystem for Linux 2) - Windows上でLinuxを動かすための仮想化技術。Windows 10/11に標準搭載されており、完全なLinuxカーネルを使用する。
- Linuxディストリビューション - Linuxカーネルを中心に構成されたOS。Ubuntu、Rocky Linux、Debianなど、多数の種類(ディストリビューション)が存在する。
- Rocky Linux - Red Hat Enterprise Linux(RHEL)のクローン。RHELと互換性があり、無料で使える企業向けLinux。
- コンテナイメージ - アプリケーションとその実行環境を一つのパッケージにまとめたもの。今回はWSL2へのインポート用として使用する。
- systemd - Linuxのシステム・サービス管理の仕組み。これを有効化することで、デーモン(常駐プログラム)を起動できる。
- sudo権限 - 管理者権限で操作する仕組み。一般ユーザーが一時的に管理者として作業する際に使用する。
第一の儀式:旅の準備(魂の器の入手)
まずは、召喚の触媒となるRocky Linux 9のコンテナイメージを手に入れる。
Rocky Linux 9 Container Image (x86_64)
ダウンロードした.tar.xzファイルは、7-Zipなどの解凍ツールを使って解凍し、.tarファイルという名の「魂の器」を用意しておくんだ。
第二の儀式:召喚の呪文(インポート)
ここからが本番だ。PowerShellという名の祭壇で、たった3つの呪文を詠唱するだけで、あんたの世界にRocky Linuxが降臨する。
聖域を築く
まずは、召喚した魂を留めておくための聖域(ディレクトリ)を築く。場所はどこでも構わんが、今回はAppData\Local配下に築いた。
PS C:\> mkdir C:\Users\Tabito\AppData\Local\RockyLinux-9
召喚の詠唱
いよいよ、wsl --importという禁じられし呪文の出番だ。
# wsl --import <召喚獣の名前> <聖域の場所> <魂の器のパス> PS C:\> wsl --import RockyLinux-9 C:\Users\Tabito\AppData\Local\RockyLinux-9 C:\Users\Tabito\Downloads\Rocky-9-Container-Base.latest.x86_64.tar
契約の確認
念のため、あんたの配下にいる召喚獣の一覧を表示し、RockyLinux-9が契約下に加わっていることを確認しておこう。
PS C:\> wsl -l -v NAME STATE VERSION * Ubuntu Stopped 2 RockyLinux-9 Stopped 2
見事に契約は結ばれたな!
第三の儀式:魂を馴染ませる(初期設定)
召喚したばかりの魂は荒々しく、まだあんたの言葉に完全には従わない。以下の儀式を行い、真の相棒へと育て上げる必要がある。
身体を清める(アップデート)
まずは、wsl -dコマンドでRocky Linuxを呼び出す。最初はrootという神の姿で現れるから、その力で身体(システム)を清め、最新の状態にしておくんだ。
PS C:\> wsl -d RockyLinux-9 [root@... ~]# dnf update -y
真の主を定める(一般ユーザー作成)
常に神の力を使うのは危険だ。普段使いのための「真の主(一般ユーザー)」を定め、その主にだけ神の力の一部(sudo権限)を授けよう。
# --- 召喚獣の世界での作業 --- # 1. sudoという力を授ける [root@... ~]# dnf install sudo -y # 2. 真の主(例: tabito)を定め、特別な一族(wheel)に加える [root@... ~]# adduser -G wheel tabito # 3. 次回から真の主として現れるよう契約を書き換える [root@... ~]# echo -e "[user]\ndefault=tabito" >> /etc/wsl.conf # 4. 主の証(パスワード)を定める [root@... ~]# passwd tabito # 5. 一旦、魂を還す [root@... ~]# exit # --- 現実世界に戻る --- # 召喚獣を完全に眠らせる PS C:\> wsl --terminate RockyLinux-9
世界の色彩を取り戻す(lsコマンドのカラー化)
このままでは、召喚獣が見る世界はモノクロで非常に味気ない。lsコマンドに色を与え、世界の色彩を取り戻す。これは作業効率に直結する必須の儀式だ。
# --- 召喚獣の世界での作業 --- # /etc/profile.d/ に色彩魔法の羊皮紙を作成 [tabito@... ~]$ sudo vi /etc/profile.d/colorls.sh # 以下の呪文を書き込み、保存するんだ alias ll='ls -l --color=auto' 2>/dev/null alias l.='ls -d .* --color=auto' 2>/dev/null alias ls='ls --color=auto' 2>/dev/null
第四の儀式:近道を開く(Windowsターミナル登録)
毎回wsl -d RockyLinux-9と呪文を唱えるのは面倒だろう。Windowsターミナルに近道(プロファイル)を開き、ワンクリックで召喚できるようにしておくといい。
- Windowsターミナルを開き、「設定」→「新しいプロファイルを追加します」→「新しい空のプロファイル」を選ぶ。
- 以下の内容を設定し、「保存」するんだ。アイコンは好きなものを選ぶといい。
- 名前:
RockyLinux-9 - コマンドライン:
%SystemRoot%\System32\wsl.exe -d RockyLinux-9 - 開始ディレクトリ:
~
- 名前:
最終奥義:召喚獣に心臓を与える(systemd有効化)
ここからの儀式はさらなる力を求める上級者向けだ。
sshdやdockerデーモンといった、自律的に動く生命体(常駐プログラム)を召喚獣の中で飼いたいなら、systemdという「心臓」を埋め込む必要がある。
# --- 召喚獣の世界での作業 --- # 1. 神の力でsystemdという心臓をインストール [root@... ~]# dnf install systemd -y # 2. 召喚獣が目覚める時に心臓も鼓動を始めるよう、契約を書き換える [root@... ~]# echo -e "[boot]\nsystemd=true" >> /etc/wsl.conf # 3. 儀式を終え、魂を還す [root@... ~]# exit
最後に、PowerShellに戻り、wsl --shutdownで全ての召喚獣を一度眠らせ、再び呼び出すことで、心臓は力強く鼓動を始めるはずだ。
羊皮紙を巻く前に
WSL2の--importという禁断の召喚術、いかがだっただろうか。
この方法を知れば、Microsoft Storeという市場の品揃えに一切縛られることなく、あんたの望む相棒を自由に召喚できる。Rocky Linuxはもちろん、自分だけの最強の環境を創り出し、それを他のPCへ魂ごと移植することさえ可能になるのだ。
この召喚術の優れた点
- 入手困難な魂も降臨可能 - Microsoft Storeに並んでいないディストリビューションを、公式の方法で召喚できる。
- 感動的なほど簡単 - たった3つの呪文(mkdir、import、起動)で、新しい相棒が手に入る。
- 完全なる自由 - 自分だけの環境を育て、それをエクスポートして他のPCへ分け与えることも可能。
- WSL2の真の力を理解 - インポート機能を通じて、WSL2の仕組みそのものをより深く理解できる。
注意すべき点
- 初期状態は荒削り - systemdが入っていないなど、基本的な設定を自分で整える必要がある。
- バックアップは自己責任 - 召喚した環境のバックアップ(エクスポート)は定期的に行うべきだ。
まとめ
もう、市場の品揃えに不満を抱く必要はない。 この禁断の召喚術で、あんただけの最強の相棒を創り出し、電脳砂漠での冒険をより自由で豊かなものにしてくれ。 この羊皮紙が、未来の旅人たちの新たな可能性を開く道標となることを願っている。
おっと、相棒が「また新しい生き物を連れてきたのか」と呆れている。今日はこのへんで筆を置くとしよう。
砂漠で見つけた魔法のランプ
- カスタム Linux ディストリビューションを使用する | 古の賢者が記した公式の巻物
- Rocky Linux Container Image | 魂の器が眠る宝物庫
- 7-Zip | 魂の器を解凍するための魔法の道具
ラクダの独り言
またご主人が黒い羊皮紙に向かってブツブツと呪文を唱えている。 なんでも「ろっきー」とかいう、岩みたいに頑固そうな生き物を自分の砂場に無理やり召喚する裏ワザらしい。 ストア(市場)にいないからって、そんな怪しい方法で連れてこなくてもいいだろうに。 まあ、その新しい相棒が俺の干し草を食べないヤツなら別に構わんがな。